Vol.15 『売れっ子フリーカメラマンは珈琲豆屋さん!?』

【職種  フリーカメラマン 】【お名前  大関  正行 さん 】
 
この地域の情報紙や広告など幅広いメディアで活躍しているフリーカメラマンの大関正行さんの
お話を伺いました。「とにかくセンスがいい!」と仕事仲間からも大絶賛の大関さん。
いかに大関さんがこの仕事を手に入れたのか迫りたいと思います。
また「好きな事を仕事にしたい」という方には特に、とても勇気を与えてくれるはず!!
今回は、【写真基礎講座】+インタビューという形で取材を行いました。

Vol.15 『売れっ子フリーカメラマンは珈琲豆屋さん!?』

【大関 正行 Masayuki Ozeki 】
一眼レフカメラ歴は7年。ものづくりの世界でサラリーマン時代を送り、その後一転
「コーヒーしか知らないコーヒー屋にはなりたくない」と、有名ケーキ屋さんでケーキ作りを
身につけ、自宅で珈琲豆屋を開業。市内の有名飲食店・カフェなどに美味しい珈琲を納める。   
趣味で始めたカメラの腕が認められ、今では売れっ子カメラマンとして、雑誌、広告、イベントなどで大忙し。趣味は食べること、寝ること、登山。

http://zeki72.exblog.jp/
Email : zekiphoto@yahoo.co.jp


1.あなたの仕事は、どのような仕事ですか?  


  お客様(クライアント)の望む写真を撮る仕事です。
  浜松を中心に、雑誌・ホームページ・メニュー表・子供の成長・イベントの撮影など
  依頼があれば、ジャンルを問わずにどんな写真も撮影します。
  
  僕は、写真家ではありません。アーティストではなく、カメラマンなんです。
  アーティストは本人の撮りたいものを撮りますが、僕の場合はお客様が撮って欲しいという
  ものを、よりキレイに見えるように撮ります。
  もちろん自分のブログでは、好き勝手気が向いたときに撮りたいものを撮って載せています。


 ―― ブログ拝見しました!写真に短い詩が添えられていて、思わずひきこまれてしまいます。
   優しい気持ちにさせてくれる写真ばかりです。
   (ブログ: http://zeki72.exblog.jp/ )


2.この仕事の魅力、やりがいはどんな所ですか?


  お客様の思い出のお手伝いができて、お客様に喜んでもらえた時が一番のやりがいです。
  そして、毎回違う場所や物、いろんな人に出会えることです。
  依頼があれば、なんでも撮影するので、決まったルーチン撮影ではなく、
  毎回現場も異なり、撮影する対象も違うので、とても面白いです。


3.仕事の流れやスケジュールを教えて下さい。


  基本的には、依頼があったら撮りに行くという風にしています。
  日程さえ合えば、なんでも撮りますね。
  
  だから、前日の夜11時に電話がかかってきて、
 「明日朝7時からなんだけど、撮影お願いできないかな?」なんて依頼もあります。
 何を撮るとかではなく、日程さえ空いてれば基本的には「いいよ~」‘という感じです。
 普通は、事前に何を撮るか知った上で撮影に臨みますが、僕は、何を撮りに行くか
 知らないままで依頼を受け撮影に行くことも多いですね。
 指定された現場に行ってから、「今日はエステかあ~」とか・・・(笑)
 写真家やカメラマンの中には、扱うテーマがあってそれ以外のものは撮影しない・引き受けない
 という場合もあるようですが、僕の場合は日程さえあえば何でも引き受けています。


 ―― 何を撮るかが事前に分からなくて、
   現場で専用の機材がなくて困ったことはなかったですか?

   昔はそういう時もありましたが、今ではそうならないように
   撮影に必要な道具は常に全て持ち歩くようにしています。


 ―― すごいですね。何でも撮影出来て、融通が利くカメラマンなんて、依頼する側からすると
     一度頼んだら、「次もお願いします!」って私もお願いしちゃうと思います。



Vol.15 『売れっ子フリーカメラマンは珈琲豆屋さん!?』
*撮影 Masayuki Ozeki   愛用の一眼レフカメラ



4.この仕事をしていて大変なことはどんなことですか?


   前もって休みがとれない事と体調管理です。日程が空いてれば仕事を引き受けるので。
   それでもこの仕事は、大変というよりは良いことの方が多いです!
   人と触れあっておいしいものが食べられたり、かわいい女の子に逢えたり(笑)
   いいネタを得られる時もあるから嬉しいです。
   会社とかチームとかで動いている訳ではなく、ひとりでやっているので、僕が風邪をひいたり
   病気になったらお客様に迷惑をかけることになる。だから体調管理には気をつけています。
 


5.今までで一番大きな仕事や印象に残っている仕事はどんな仕事ですか?

  印象に残っている仕事としては、「自分を変えたい」といって、
  ブログを見てくれた個人の方から、撮影依頼があった時の事をよく覚えています。
  ご自身の何かを変えたくて僕に撮ってもらいたいと、大阪から浜松まで来た人がいました。 

  ―― 大阪からですか、すごいですね!!そう依頼もあるんですね。


   撮影後に何かを見つけて、「自信を持って生きていけるようになった」と言われたことは
   今でもすごくよく覚えています。

   人物写真を撮る際は、撮る方のことを徹底的にほめて笑顔を引き出します。
   自分自身もテンションをあげて「きれいだよ~、いいね!、笑顔が素敵だよ~」とか。
   2時間でだいたい400~500枚くらい撮影しますが、
   その間に「私ってまだまだ大丈夫!」とふっきれるみたいです。
   また、撮った写真をご自身で見て、客観的に姿勢や表情とかを見直すからでしょうか。
   次に会うと、必ずキレイになっている!女性はどんどん変わります。

   その後、何件もそういった依頼が来ましたよ。
   「結婚が決まりました!」「決心がつきました!」なんて後で連絡をもらったり・・・
   何かのきっかけにしたいという理由で撮ってほしいという人がいるので
   それはとても嬉しいことです。

Vol.15 『売れっ子フリーカメラマンは珈琲豆屋さん!?』


6.現在に影響を及ぼしている、人生での転機はどのような出来事でしたか?
  これまでのキャリア(経験や経歴)を合わせて教えて下さい。


  サラリーマン時代、
  友達に「おまえ、死んだ魚の目をしているけど、大丈夫?」と言われた事です。
  

  ―― 死んだ魚の目ですか・・・(笑) すごい表現ですね。
  

  当時22歳くらいかな、工業高校を卒業した後、サラリーマンを5年くらいしてました。
  機械設計の図面を書いたり、設備を修理したり、土日も休みなく、忙しく働いていた時でした。
  
  特別何かなりたいものがあるわけでもなく、将来には見えない不安があったけど、
  サラリーマン時代は、普通が一番だと思い普通の人生を送るつもりでした。
  普通に働いて、普通に結婚して、普通に暮らすのが幸せだと思ってた。
  
  そんな時に、「死んだ魚の目」なんて言われたので、ショックでした。
  「どうしよう。何かやんなきゃ!!」そう思っていた時、「いつかやろうと思っていた
  コーヒー豆屋を今からやろう」って思うようになって、コーヒー豆屋になろうと決めました。
  東京までいって美味しいと言われる有名店を飲み歩いて自分なりの研究をしました。
  「これが日本一って言われてるコーヒーかぁ!?これなら俺でもいけるんじゃない?」   
  なんて勘違いして、ある意味自信が付きました。これも根拠のない自信ですが(笑)
  そんなコーヒーのつくり方は、誰かに教わったわけでもなく、我流です。

  「コーヒーしか知らないコーヒー屋にはなりたくない」。そう思って
  珈琲といえば・・・・・、ケーキかな。そうひらめいて、ケーキを勉強しようと
  あるケーキ屋さんに「2年後にコーヒー豆屋を始めたいので、ケーキをちょっとだけ勉強したい
  ので働かせてくれないか」とお願いしたら、当然「そんなやついらない!!」と門前払いで
  断られました。


  次に、友人から美味しいケーキの店だと聞いていた、浜松でタルトで有名な某ケーキ屋さんに
  お願いにいきました。
  今回も「2年後にコーヒー豆屋として独立するので、働かせて欲しい」と言うと、「おまえ面白い
  やつだな!やる気のある人は歓迎だ」と思ってくれたみたいで、見事働かせてもらえることに。

  ケーキなんて作った事もないから「最初は洗い場だろうなぁ~」なんて思っていたら、とても
  忙しいお店で、どんどん仕事をしなくてはいけない状況でした。周りは19~22才くらいの若い
  女性ばかりで、負けられない!と本を買って勉強して、半年もすると製菓学校を卒業した
  スタッフにケーキ作りを教えるまでになりました。昨日入った人だろうが、やりたい人がどんどん
  やるという社風だったので、僕も自らやりたいと手をあげ色々と挑戦させてもらいました。
  辞める頃には「店長がいない時は大関」って感じになっていました。

  予定通り2年後に、コーヒー豆屋の登録をしてケーキ屋を去り、25才の時にコーヒー豆屋を、
  自宅を拠点に始めました。


  ―― カメラマンとはほど遠い、経歴ですね!(笑)
  それにしても面白い経歴ですね。コーヒー屋さんは今もされているのですか?


  もちろん、今もやってます!浜松を中心に10数店のレストランやカフェなどで、僕の焙煎した
  コーヒー豆を使ってもらっています。
  コーヒー豆はお店を開いてというよりは、自宅でちょっとずつ売ろうと始めて、
  やるからには「浜松で○○食べるならこの店」と言われるお店に使ってもらいたい!と営業
  しました。最初に受け入れてくれたのがフレンチレストラン「ヒルマン」のオーナーでした。
  まったく知り合いでも何でもなく、友人に美味しいお店だと教えられて食べに行き、
  オーナーに直接「料理の余韻をより楽しめるコーヒー豆を作るので、完成したら試して欲しい」
  とお願いしました。以来気に入ってもらって10年以上のお付き合いになります。
  「ヒルマン」のオーナーのおかげで、他のお店を紹介してもらったりして、今では市内の名のある
  お店で使ってもらってます。


  【Hillman ヒルマン】 http://hillman.jp/hill/h_index.html
   静岡県浜松市東区西塚町309-5-1C Tel&Fax 053-463-4256  



  ―― すごい行動力ですね。コーヒー豆とカメラはどこでつながるのですか?


  カメラは、2003年くらいのデジカメブームの時に、友達がはまっているのを間近でみて
  コンパクトカメラを購入。意外と面白くてのめり込み何台か買い換えた後、2005年にデジタル
  一眼レフのカメラを購入しました。
  当時周りの友達が結婚ブームで、結婚式や結婚式の二次会で撮影をお願いされる機会が
  増えていき、少しづつお金をもらえるようになっていきました。その当たりから、コーヒー豆の
  納品先のお店から「広告写真を撮ってよ」と頼まれ、「あの写真誰が撮ったの?」「あれ、あの
  コーヒー豆屋だよ!」なんて話がどんどん広がり、カメラマンとしての写真撮影の依頼が
  どんどん入るようになりました。
  僕の場合、カメラマンになろうと思って、カメラマンになった訳じゃないんですよ。


――カメラマン歴はどのくらいですか?


  カメラマンと名乗って名刺を作ってから6年くらいです。
  ちなみに、コーヒー豆屋になってからは12年くらいです。


7.現在の仕事に就く前と就いた後では、意識など変わったことはありますか?
     

  根拠のない自信を持つようになったこと。(笑)
  よく友人からは、「その根拠のない自信はどこからわいてくるのか」とか、
  「本当に何も考えてないよね」とか言われますね。


―― 根拠のない自信!大事ですよね。私も学生時代はそれだけでした。(塩崎)


  カメラマンの仕事って、その現場を仕切る責任者という立場でもあるんですよ。
  だからそこで僕が自信もなく、不安を与えてしまうような存在だと仕事はもらえない。
 「大丈夫です!問題ないです!」と常に安心を与える存在であり、お金もらって
  プロとして仕事する以上は、しっかりやらなくちゃいけない。
  だからこそ自信は大切なのです。

Vol.15 『売れっ子フリーカメラマンは珈琲豆屋さん!?』
*撮影 Masayuki Ozeki


8.日々意識していること、大切にしている事はどんなことですか?


  それは、笑顔と即決です。いくらカメラの腕が良くても撮影現場やモデルさんが楽しくなければ
  いい写真は撮れないというのが僕の持論です。カメラマンが撮られる人をいかに楽しませるか
  が重要だと思います。その場を楽しく、そして早く終わらせる撮影を心がけています。
   
  即決に関しては、即決をすることで自分がリードを取れるという利点があります。
  その後の仕事がやりやすくなりますしね。

 
 ―― それとすごくプラス思考ですよね。

   
  そうですね、基本的に超プラス思考ですね。常にその現場を楽しむようにしてます。
  あるものの中からいいものを見つける。何事も上を見たらきりがないし、
  下を見てもイイことあまりないですからね。まずは今を大事にする。
  だから毎日何をしていても楽しい!


 ―― そういう考えをしっかり持っていらっしゃるから、コーヒー豆屋さんも
    カメラマンもうまく成功されているんですね。


 ――やはり何事もとことん極めないと気がすまない性格ですか?

  いや、何も考えてないですよ。ホント、ただなんとなく。
  ただ、ねらいが良かったと思う時はあります。ちょうど時代の隙間に入れた。
  1年遅かったらダメだったと思います。ただただ「運がよかった」
  周りの人との出会いがとても良かった。



9.現在はどのような夢をお持ちですか?



  特にないです。3年後もカメラマンをしているか分からないですし・・・
  自分は自分だと思います。コーヒーやカメラに対しても、別に有名な批評家や写真家に
  認められなくてもいいと思っています。
  特に好きな写真家や目標とする人がいるわけでもないし。
  例えば、「よく分からないけど、ここのコーヒーは美味しい」って思われたり、写真も素人が
  見て、「すごくいい写真だね」と言われればそれでいいと思っています。

  
  職種や肩書にはこだわらない。
  何か肩書きのついた大関正行だから・・・ではなく、
  実力というか個人を見て判断してもらいたい。
  僕の撮った写真を見て、コーヒーを飲みながら人と人がつながる
  コミュニケーションのツールになればいいです。

Vol.15 『売れっ子フリーカメラマンは珈琲豆屋さん!?』
*撮影 Masayuki Ozeki


   写真やコーヒーを通じて、特別な場所やモノじゃなく、ありふれた毎日の中で
   見逃しているような些細な幸せに気づいていけたらイイなって思います。



10.これから就職や転職を迎える若者への期待やアドバイスをお聞かせ下さい


  やる気とプラス思考です。好きなことがあればそれをどんどん追求していってほしいです。
  あとは、何にも考えなくても何とかなると思います。
  とにかく現状を楽しんでほしいです。
  

  ――挫折などは、なかったのですか? (井村)

  ありましたがそれを苦労や挫折とは、感じませんでした。
  将来が見えなかった時は、どうしようと思いましたが、
  なるようにしかならないと思い成り行き任せでした。

  
 ―― 大関さんの言葉を鵜呑みにすると、痛い目にあうかも・・・(笑)
   「何も考えなくてもなんとかなる」と言えるのは、好きな物を徹底的にこだわったからこそ、  
    言える言葉だと思います。その上で、「俺って適当だよ」と言える大関さんが
    とてもカッコイイですね!! (塩崎)

    ありがとうございました。


Vol.15 『売れっ子フリーカメラマンは珈琲豆屋さん!?』
*写真基礎講座の様子  熱心に耳を傾けカメラをいじる受講生達           
*希望者には有料で写真講習をしてくださいます。大関さんのブログをチェック!



Vol.15 『売れっ子フリーカメラマンは珈琲豆屋さん!?』
*取材協力を頂きました【waiz café】さんでは、大関さんの珈琲豆が楽しめます!!
【waiz café】 (ワイズカフェ)浜松市有玉西町163−2  休:日曜日
tel:053−401−7386 月〜土 10:00〜18:00 
金・土のみ→ディナータイム 18:00〜22:00(※金曜ディナータイムは完全予約制)
http://waizcafe.hamazo.tv/


【編集後記】

 私は、なんとなくで始めたことがこんなにも続いているからすごいなあと思いました。
 何を撮るかも知らないで撮影に行くところはすごいなと思いました。
 運やタイミングがいいのかもしれませんが、それを自分のものにしていくことは大変だと
 思います。我流で自分をとおしていて、誰からも慕われるそんな存在だと私は思います。
 (22才 井村江里)


 最近ふと目に付いた言葉です。
『運がいいなんてありえない。チャンスは周到な準備をした者だけにやってくる。』
 素粒子物理学・宇宙線物理学の分野で多大な業績を上げ、ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊さんの有名な言葉です。
大関さんのお話を伺い、「運がいい」というよりも、とにかくセンスが良くて、努力を怠らない人だと思いました。ただただ、上を向いて、幸せが天から降ってくるのを待っていても幸せはやってこない。自分で幸せになる準備をしているからこそ、運を味方に出来るのだと思います。                     (取材・編集 塩崎明子)



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